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2016/10/04

インハーシューズのおすすめ

ジェニファー・ウェイナーの同名ベストセラー小説を映画化した2005年公開のアメリカ映画です。タイトルの「イン・ハー・シューズ」は、著者が“彼女の立場になって”という意味合いでつけたそうです。

タイトルにもなっているように映画の中でも、様々な靴が登場します。ジミー・チュウ、マロノ・ブラニク、シャネルなどの高級靴からぼろぼろのスニーカーまで、ストーリーや登場人物の心情に合わせて衣装デザイナーがこだわりぬいて選んだそうです。

衣装デザイナーのソフィー・デラコフは「キューティ・ブロンド」のエルのファッションの生みの親です。全身ピンクでキュートな服装にチワワを連れた女の子を知っている人は多いのではないでしょうか。

そういう意味では、わりと女性向きの映画になるのかもしれません。

しかし、この映画はファッションが楽しいだけではなく、家族や障害、結婚など様々なテーマを扱っているので、わたしはぜひ男性にも観てほしいタイトルです。

あらすじ

インハーシューズのあらすじ

この物語の主人公はある姉妹です。妹のマギー(キャメロン・ディアス)は誰もが羨むようなスタイルや美貌を持っているけど、学歴も資格もなく何の仕事をしても長くは続かない…

一方、姉のローズ(トニ・コレット)はフィラデルフィアで活躍するエリート弁護士。でも自分の容姿にコンプレックスがあり、高価な靴を買ってもクローゼットにしまったまま…。

ある日、家を訪ねてきたローズのボーイフレンドとマギーは寝てしまいます(マギーは定職がないのでローズの家に居候していました)

それを知ったローズは堪忍袋の緒が切れたとばかりに、自分の不満をぶちまけ、とうとうマギーに出ていけと宣告します。

しかし、姉以外には誰も頼れる人がいないマギーは途方に暮れてしまいます。そこで偶然にも祖母のエラ(シャーリー・マクレーン)がフロリダにいることを知ったマギーはなけなしのお金をはたいて祖母の元へ向かいます。

祖母のエラは老人ホームに住んでていて、いきなりの訪問に驚いたもののマギーを歓迎してくれました。

しかし、マギーは以前からのクセで、エラの部屋からお金を盗もうとしてしまいます。それを知ったエラは住んでいる老人ホームでマギーに働くよう言い渡します。

最初はやる気のなかったマギーでしたが、ある老人との出会いがマギーの心を変えていきます・・・。

あなたは誰に感情移入する?

一見自由奔放で楽しく生きてるように見えるマギーですが、実は姉のローズと同じように大きなコンプレックスを持っています。

それは難読症という障害です。この障害は知的能力にはまったく異常はないのに、文字を読んだり書いたりすることがとても難しいという症状が出ます。

マギーが定職につけないのはこの障害を抱えているからというのも大きな要因のひとつだったのだと思います。

私はこの映画を見て、初めて難読症という障害を知りました。そして小学校の時の同級生の女の子を思い出しました。彼女も知能にはまったく問題がないのに、文章を読んだり、計算をしたりするのにとても時間がかかっていました。

今思えば、彼女もこの障害だったのかもしれないです。アメリカでは人口の約1割が難読症であると言われていて、ハリウッドスターのトム・クルーズやキアヌ・リーブスなどが難読症であることを告白しています。

残念ながら日本ではアメリカほど難読症の研究や知名度は大きくなく、障害を抱えている人はきっととても苦労されているのだと思います。この映画を観て、そういう障害があるんだともっと知ってもらえるといいですね。

そしてマギーに関してもうひとつ注目してほしいのが、彼女が「とても孤独な人」だということです。

明るいマギーなら友達も多そうな雰囲気ですが、映画の中では友達らしき人は一人もおらず(男性にとてもモテるマギーなので、女性からは反感を買ってしまうことも多いのかもしれません)、事情があって家族とも上手くいってもいない、どこか腰を据えて働いてるわけでもないので同僚もいない、本当に唯一心を開けるのは姉のローズだけです。

こういう部分を見ると盗みをしたり、周りに迷惑ばかりかけているマギーだけど、どこか憎めないです。きっと姉のローズもそれを知ってるから、ボーイフレンドとの一件があるまでは迷惑をかけられることがあっても許してきたんだと思います。

一方、姉のローズはマギーとは正反対とも言ってもいいくらい真面目でしっかり者のキャリアウーマンです。自分の仕事だけではなく、バーで酔いつぶれたマギーを迎えに行ってあげたり、自分のお給料で買った高級靴を勝手に履かれても、マギーをあまり強くとがめません。(そんなことは二人にとって日常茶飯事だからという理由もあると思います。)

ローズに共感できる点は、マギーにたとえどんな迷惑をかけられようと、彼女を見捨ててはおけないというところです。

ボーイフレンドとマギーが寝たことを知って、一度はマギーを追い出したローズですが、すぐに後悔の念に苛まれます。もちろんされたことはとても許せないけれど、たったひとりの妹を失うかもしれない、それがとっても恐くなったんですね。

マギーとローズの両親は母親は二人が幼い頃に亡くなり、父親は健在ですが再婚し新しい家族と暮らしていて、二人と会うことはめったにありません。

だからローズにとっても本当の家族はマギーだけです。マギーが出て行った後、ローズはすっかり動揺し、ついには勤めていた弁護士事務所まで休職してしまいます。(マギーの不在以外にも理由はありますが)マギーが老人ホームで頑張っている間、ローズも妹のいない新しい人生を懸命に生きようとあがきます。

マギーとローズは一度離れることで、ようやくお互いに自分自身の人生を歩みだしたのかもしれません。

「あなたを最も知る人物はあなたを最も傷つけることができる」

これは脚本を担当したスザンナ・グラントが今回の映画を製作するにあたって言った言葉です。それが愛することのリスクであると。

しかし、彼女はそれと同時にこんなことも言っています。

「でも、愛さないことのリスクはそれよりもっと大きい。だってそれは恐ろしい孤独を意味することだから。」

これって姉妹だけではなく、あらゆる家族、恋人、友人関係で言えることですよね。この映画ではまさにこの言葉を体現してくれてるなと思いました。

おわりに

落ち込んでいるとき(日常でなんとなく上手くいかないとき)、マギーやローズ、そしてその周りの人たちが悩みながらも自分のできることを精一杯やってる姿を観ると、とても救われるのではないでしょうか。観た後にとても爽やかな気持ちになれる映画だと思いました。

そしてとにかく女性たちがチャーミングです。20代後半のマギー、ローズから老人ホームのおばあちゃんまで幅広い世代の女性が出てきますが、みんなどこか憎めなかったり応援したい気持ちになります。

この映画は今、なにかに悩んでるとか失敗してしまった人に観てほしいです。後味が悪い終わり方ではないので、「もう少し頑張ってみようかな」「今は上手くいかないけど、なんとかなるかもしれない」

そんな前向きな気持ちになれると思います。この映画がそんな人の新しい一歩を手助けしてくれることを願っています。

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