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2016/10/29

おすすめのエッセイ

今回は電車や待ち時間にでも読める非常に読みやすいエッセイを選んでみました。どうぞご参考にしてみてください!

情けないけど愛おしい日常~穂村弘『世界音痴』

穂村弘さんは現代短歌を詠む歌人です。この世界音痴は2002年発売で穂村さんが歌人とサラリーマンを兼業しているときに出版されたものです。(現在は退職)

『世界音痴』というタイトル通り、世界とは、どこかずれてしまっているエピソードが数多く語られています。

・回転寿司で注文を無視される
・夜中に菓子パンをむさぼりつつ、青汁とビタミンCはかかさない
・もしかしたらボールが当たるかもと怖くて野球の試合が見に行けない

ちょっと変わってるけど、なんだか「わかるような気がする…」と思える不思議なエッセイです。

特に一番面白いおススメのエピソードが本屋の話で、穂村さんは自己啓発本をいくつも抱えて持っていたそうです。

そこを友達と会ってしまい、思わずつっこまれます。
「これは?」
「ああ、『素敵な女性の時間割』ね。男性の自己啓発本ってビジネス系が多くてつまんないんだよね。女性の方がお風呂に何入れるとか、冷凍庫の上手な使い方とか、パンプスの持ち歩き方とか、生活のディティールが書き込んであって、読んでて楽しいんだ」
「パンプス・・・」
「うん、ぼくは履かないけどね」
という場面があって、穂村さんって女子力高いというか、やっぱりすごく不思議な人だな~とちょっと笑ってしまいます。

エッセイの最後におまけのようについている短歌が素敵です。さすが歌人だけあって文章にリズムがあってエッセイだけど、詩的な感じがしました。

思い出の中にはいつも本があった~又吉直樹『第2図書係補佐』

小説『火花』で作家としても大ブレイクした又吉直樹さんの読書をテーマにしたエッセイ本。

通算2000冊もの本を所有する、かなりの読書家の又吉さん。好きな作家は太宰治、芥川龍之介、中村文則さんなどだそうです。

今回文庫本の巻末では、その中村文則さんと対談されています。(それ以来、一緒に飲みに行ったりしていているそうです。)

特に印象に残ってるのが、姪っ子と会ったときのエピソードで、又吉さんは仲良くなろうと必死に頑張るのですが、全然嚙み合わない。

しかし数日後、大阪からその姪っ子から手紙が来ます。

「いっしょにあそべてたのしかった。ありがとう。またあそんでね。」

あれ?実は楽しんでたのかな?と思ったら、その下に目から下が青色の化け物の絵が添えられていたんです。

そう、それは姪っ子が描いた又吉さんの似顔絵(又吉さんは気合を入れて、念入りにひげをそって出かけた)でした。

このエピソードでは西加奈子さんの『炎上する君』という本が紹介されています。

自由奔放な発想力で書かれた短編集で、姪っ子の純粋な感性とどこか通じるところがあったのかもしれませんね(笑)笑えるけど、どこか悲しい、そんなエピソードが集められたエッセイです。

みずみずしい感性で綴った食エッセイ~江國香織『やわらかなレタス』

繊細で細やかな文章で多くの女性読者から絶大な支持を受ける江國香織さんの食エッセイです。

例えば”豚骨のぷるぷる”やリスが仮死状態になるくらい寒い場所で飲む”あたたかなジュース”など、江國さんのフィルターを通せば、どんな日常も特別になってしまう、そんな気がしました。

江國さんは特にフルーツが大好きなようで、並々ならぬこだわりを語っています。(どのフルーツがいつ食べ頃か、それを逃さないようにこまめに状態をチェックするそうです。)

タイトルになっている”やわらかなレタス”は絵本ピーターラビットに関する一文で童話作家もしている江國さんならではの目の付け所ですね。

ピーターラビットは世界的に有名な絵本で、誰もが知ってるようなキャラクターだと思うのですが、当方は江國さんのこのエッセイを読むまで詳しい内容は知りませんでした。

お話の中心は野うさぎのピーターとその家族、そして近くに住む農家のマクレガー夫妻です。

ちなみにキャラクター紹介の際、”ピーターのお父さんは、マクレガーさんのおくさんににくのパイにされてしまった”と書いてあるそうです!(泣)とってもシュールな部分もあるんです。

野うさぎのピーターはお母さんうさぎにダメと言われていながらも、ついにマクレガーさんの畑に入って、そのレタスを食べてしまいます。

そしてそのおいしさに感動しました。「なんてやわらかなレタス!!」最初江國さんはどうしてやわらかなレタスなんだろうと思ったそうです。(普通レタスなら、パリっととかの方が美味しそうなのではないかと)

しかし、ピーターは野うさぎで私たち人間が食べるような、食用の野菜はめったに食べれません。普段はそこらへんに生えている草(きっと固くて干からびて、すじっぽかったりするでしょう)を食べているのです。

ですからマクレガーさんの畑のレタスを食べたとき、ピーターはそのやわらかさとみずみずしさに感動したのです。

江國さんはこの一文を読むために、ピーターラビットのシリーズを読み返します。だけど、そんな文章は出てこない。

一番近いのは続編『ベンジャミンバニーのおはなし』の中の「このはたけのレタスは、たしかにじょうとうでした」という一節。

江國さんはそれに驚きます。江國さんが気に入っていた“やわらかなレタス”という表現はおそらくそのお話を読んで、うさぎになりきった江國さんが自ら作った言葉だったのです。

でも確かにこの”やわらかなレタス”という表現は素朴でやわらかなピーターラビットの世界にぴったりの言葉に思えますよね。江國さんの想像力や日常をまっすぐ素直な気持ちで見る視点には、いつも素敵だなと思わされます。

読むと美味しいものを食べたときのような、幸福な気持ちになるエッセイです。

美女は一日にしてならず~林真理子『美女の七光り』

小説『不機嫌な果実』、『下流の宴』など女性のプライドや嫉妬など生々しい部分をリアルに描く文章が特徴の林真理子さん。交流関係が広く、芸能人や各界(マスコミ、雑誌、美容関係など)の知り合いも多いそうです。

このエッセイにも神田うのさん、秋元康さん、君島十和子さんなど豪華な面々が出てきます。

ダイエットやエステ、洋服など美に対してお金を惜しまない林さんの華やかな生活ぶりを楽しめるのはもちろん、日々美しくなるために努力する姿(たまにはだらけたりしてしまう姿)に自分も頑張ろうと思えるエッセイです。

江國香織さんがナチュラルビューティーだとしたら、林真理子さんはゴージャスな美という感じがしました。(“意識高い系”というのでしょうか…?)

2012年に出版された本ですが、バブリーな内容で面白いです。(日々開催される合コンやパーティー、海外旅行に高級ブランドの海!)

今は亡き川島なお美さんとは”魔性の会”を結成していたそうです。

この会は林真理子さん、川島なお美さんが主なメンバーで素敵な年上男性にごはんをごちそうしてもらう会らしいです(結婚されてからも続く旦那様公認の食事会)

林さんの周りの女性はみんな何歳になっても恋を楽しもう!というパワーがあって、こんな交友関係の中にいたら楽しそうだな~と思いました。仕事も恋愛も楽しみたい、パワフルな女性におすすめです。

まるでラジオを聴いているような感覚~宮藤官九郎『え、なんでまた?』

ドラマ『木更津キャッツアイ』やNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』など数々の人気作品の脚本を手掛けている人気脚本家、宮藤官九郎さんのエッセイです。

このエッセイを書いている時期はドラマ『11人もいる!』の撮影中、そして『あまちゃん』の製作段階で、それぞれエピソードとして出てきます。

タイトルの通り、宮藤さんがいろんな場面(テレビ、映画、舞台、日常など)で「え、なんでまた?」と思ったことを綴ったエッセイです。文脈がまるでラジオを聴いてるかのようで読みやすいです。さすが脚本家ですね!(読んでると宮藤さんの声が聞こえてきそうです 笑)

中でも特に印象に残っているのがドイツから来たファンレターの話。相手はハンブルクに住む大学生で独日辞典で一生懸命書いた文章がとても和みました。
以下エッセイから抜粋します。

「私は何か見つけた。ですか5今この手紙を書いている。ファンレターみたいだ。私には少し変ですけど書きたいんだ」(“ら”を5と間違えて書いてます)
「二つの日本映画を見た。SHONEN-MERIKENSACKやINSTANT-NUMA。」(宮藤さんの監督作と出演作)
「冬の寒さのため、私の仕事の忙しさのため、ちょっと疲れる感じがあった」
そうだけど「見たら気持ちよかっただ」(よかっただ??)
「俳優たちの役は変だけど人好きのする役だ」(多分憎めないとか愛すべきとかって意味でしょう)
「音楽はPUNKROCKだった。素晴らしいだ」(“だ”の使い方が難しいんですね)

このようにちょっとちぐはぐな文章になっていますが、映画のテーマはしっかり伝わっていました。
「話は速過ぎて全部の冗談は分からなかったが、好きな事があれば、友達がいれば、生活は素晴らしいことだ。かな!」
「ときどき好きな事は馬鹿な事だ。しかし、馬鹿なのに、好きだから成功する」

という感じで、わざわざドイツからしかも日本語で書いてくれたファンレターに宮藤さんは感動したそうです。内容は宮藤さん独特のゆるーい感じでとても読みやすいです。ときどきくすっと笑えます。

落ち込んだときとかに読むと気分が軽くなっていいかもしれません。

人生とは泣くものよ~マツコ・デラックス『デラックスじゃない』

いまや観ない日はないほど売れっ子タレントとなったマツコ・デラックスさんのエッセイです。自分の生い立ちから現在にかけてまでの道のりを赤裸々に語ってくれています。

マツコさんはタレントになる前はゲイ雑誌のライターをしていたそうです。(今でも女性誌などでコラムを書かれています)

そのせいもあってか、とにかく面白いです!!特に毒舌とかそういうわけではなく、きっとマツコさんの素直な気持ちを書かれたエッセイだと思うのですが、すごく笑えます!

印象に残ってる文章は”決めつけ”に関する文章だったのですが抜粋します。

葛西さん(スキージャンプで金メダルをとられた葛西紀明選手)のこと、こんなふうに実は勝手に決めつけてたんだけど、実はそういうことって多いよね。(マツコさんは葛西選手がオリンピックで金メダルを取る前に番組で共演して、そのときもう引退した選手だと思っていた)

年齢だけでなく、自分が思い込んでることによって、どれだけ自分の了見を狭めているんだろう。芦田愛菜ちゃんを子どもだと思っちゃダメなのよ。ロバート・デ・ニーロだと思わなきゃダメなのよ。

言ってることはすごくわかるんですけど、ロバート・デ・ニーロって!エッセイの中ではこんな風にマツコさん節が炸裂しています。比喩や言葉がいちいち秀逸で、読みだすと止まらなくなります。

読んだらもっとマツコさんのことが好きになること間違いなしです!

のびのびと生きよう~よしもとばなな『バナタイム』

『キッチン』や『TSUGUMI』などの小説で有名なよしもとばななさんのエッセイ。表紙、挿絵は原マスミさんが担当しています。(南国調でとっても可愛いです。)

2002年に発売されたエッセイで、よしもとさんの失恋から結婚、そして日常・旅などさまざまなテーマで書かれています。

文章はのんびりしていてとても読みやすいです。語り口がやさしいので、疲れたときや癒されたいときにぴったりな本だと思います。

その中で高知に旅行したときのエピソードを書いた文章があります。高知は広末涼子さんの出身地でよしもとさんは偶然広末さんのご実家の前を通りがかったそうです。(とても感じがよい小さな雑貨屋だった)

そのとき広末さんは週刊誌でプライベートについて騒がれていて、そのことについて担任の先生が記事に対してコメントしたそうなのですが、それが素敵でした。

「涼子をバッシングするのはけしからん。二十歳になって朝帰りしたらいかんのでしょうか。それを書き立てるほうがおかしいと声を大にして言いたい。

涼子は天真爛漫なまま、誹謗中傷のうずまく芸能界に飛び込んで苦労している。辛いことがあったら一緒に唄った『オー・シャンゼリゼ』を口ずさんで頑張るんだ。」

よしもとさんはこれに対して、「なんてさわやかで、力強く、シンプルで、教師らしい素晴らしい言葉だろう」と語っています。

偶然かもしれませんが、よしもとさんは高知の旅では広末さんの担任の先生のような気持ちの良い人ばかりだったそうです。

高知の話だけではなく、読んでいて心があたたかくなるエピソードばかりでした。とてもおすすめです。

おわりに

いかがでしたか。エッセイはひとつの文章が短いものが多いので、普段読書をしない人にも読みやすいと思います。いろんなエッセイを読んでて思うのは、どんな日常にも笑える部分があるのだな~ということです。

何事も深刻になりすぎず、暗い気持ちになったときは本でも読んで気分転換してみましょう!

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